モフリの雑感

2024-07-19 14:26:00

判例シリーズ 2

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判例シリーズ第二弾です!

今回は、大阪地裁平成18年9月15日判決 を取り上げてみます。

 

ある飼い主さんの処で暮らしている猟犬のワンコ。

ある日、飼い主さんのお母さんがお散歩に連れて出ますが、その時に悲しい事故が起こりました。

ワンコが暮らすご自宅前を偶然自転車で通りかかった方に、飛びかかるような様子で近づいて吠えかかってしまいました。

驚いたその方は、木や壁に接触し最後には転倒し、左母趾末節骨骨折等のケガを負われました。

 

前回の判例シリーズでご説明しましたように、民法では動物占有者責任という責任を定めています。(民法 第718条1項)

簡単に言いますと、「動物を飼っている人や管理している人は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任がありますよ!」と法律は定めています。

そして、「ただし、その動物の種類や性質に従って相当の注意をしていたら別ね」という例外も設けています。(民法718条1項ただし書)

 

そこで、この裁判のポイントは、

① 飼い主さんは相当な注意をしていたか

② ワンコが直接被害者に接触していなくても、飼い主は損害の責任を負うのか

③ 賠償額はいくらか

となりました。

 

裁判所は、

①飼い主さんのお母さんが、家の前をよく確認せずにワンコを連れて出たこと、飛びかかるような様子で近づいて吠えかかることを許した行為は、相当な注意をしていたとは言えませんね、として過失があるとしました。

②飼い主さん宅から出たワンコが、通行人や自転車に対して向かっていけば、驚いて転倒することは容易に想像できますよね。だから直接接触していなくても、飼い主さんの過失と被害に遭われた方の損害とには因果関係があるといえますよ。だから飼い主さんは責任を負います、としました。

そこで、

③飼い主さんが負う賠償額は

  治療費            13,859円

  通院交通費          16,260円

  休業損害           1,080,000円

  障害慰謝料             440,000円

  後遺障害逸失利益      1,106,161円

  後遺障害慰謝料     1,100,000円

  弁護士費用            350,000円

 

                 の合計4,106,280円 を認めました。

 

この判例により、ワンコが接触していなくても、ワンコが吠えかかったことによる事故の責任は飼い主さんが負うのですよ、ということになりました。

動物を飼う、一緒に暮らすことの責任の重さがよくわかる判例となっています。

 

一時の感情で動物を飼うのはやめましょう!

動物を飼ったら最後まで責任を持って愛情を持って育てましょう!

とは、よく言われる言葉です。

この責任には、動物の命、暮らしに対する責任だけではなく、他人に対しての責任もあるということを肝に銘じていきたいと思います。

 

きちんと覚悟を持って動物と暮らすことが必要なんですね。

人も動物も幸せに暮らしていけますように…

 

2024-07-04 10:00:00

のとじま水族館 一部再開へ

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※写真と本文は関係ありません

 

石川県七尾市にある、石川県内唯一の水族館「のとじま水族館」が、今月20日から『一部営業再開』されるそうです!

 

のとじま水族館は、元日の能登半島地震で甚大な被害をうけ、現在に至り休館が続いています。

建物自体の倒壊はなかったものの、震度6強の激しい揺れで設備の故障が相次ぎ、約5000の生き物が命を落としたとされています。

「配管がいたるところで破損し、ボイラーやろ過装置などが故障。

水温・水質・水位の維持が難しくなり、生き物を取り巻く環境が刻々と悪化していった。」

との新聞記事を目にして、胸が詰まりました。

スタッフの方々のお気持ちは、察するに余りあります。

 

のとじま水族館では、飼育継続が難しいと判断したイルカ、アザラシなどの受け入れを全国の施設に要請。

2月上旬までに、快諾してくれた9施設へ9種63個体を移送したそうです。

生き物を守りたいという思いを投げかけ、その思いを受け止めてくれた方々、双方の方々への尊敬の念に堪えません。

 

7月20日からの『一部営業再開』の発表に心躍る方もいらっしゃるのではないでしょうか。

以下リンクを貼っておきますね。

  https://www.notoaqua.jp/

 

7月20日と言えば、夏休みの始まりでしょうか?

子供たちの楽し気な声が、館内にあふれることを願ってやみません。

避難している生き物たちが一日も早く戻ってこれますように…

2024-06-25 10:32:00

“アビガン”がSFTSの治療薬に

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富士フィルム富山化学株式会社は、24日に新型インフルエンザ薬の“アビガン”を、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の治療にも使えるようになる承認を取得したと発表しました。

これは世界初の治療薬が登場したことになります。

すごいですね!

SFTSというのは、主にSFTSウィルスを保有するマダニに刺されて感染します。

潜伏期は6~14日で、発熱や消化器症状などが主ですが、筋肉痛や神経症状などの症状も出現するそうです。

 

怖いのが致死率。

厚生労働省、国立感染症研究所の発表によりますと、ネコは約60%、ヒトは10~30%だそうです。

イヌは不顕性感染(症状が出ない感染)すると考えられてきましたが、2017年6月に、世界で初めて発症したイヌが見つかり、状況が変わりました。

 

今までは対症療法しかなかったのですが、アビガンが治療薬として効果を発揮してくれれば、ありがたいですね!

 

とは言え、大切なのは予防です。

人の場合は、農作業や野山を散策するときには、長袖、長ズボン、足を完全に覆える靴(サンダルなどは避けてくださいね)、帽子、手袋を着用すること。

草むらや藪などはマダニが多く生息するので要注意です。

もし刺されたら、皮膚科などを受診して確認してもらいましょう。

 

犬、猫の場合は、予防薬が充実しています。

獣医さんに相談してみてください。

とは言え、予防薬といえど完全ではありません。

お散歩などお外から帰ったらこまめなチェックを忘れずに!

特に、頭・耳・目のふち・お腹・指の間・背中・しっぽなど、チェックしてあげてくださいね。

もし刺されたら、獣医さんに診てもらいましょう。

 

マダニは他にも、日本紅斑熱・ライム病・ダニ媒介性脳炎・犬バベシア症を引き起こすこともあります。

予防できるものは徹底して予防し、それでも刺されたら医師、獣医師に診ていただく。

むやみに怖がる必要はありませんが、きちんと対策して人も動物も安全に暮らしていきたいですね。

双志郎と私も気をつけます。

2024-06-17 11:25:00

NPO法人 日本レスキュー協会

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NPO法人 日本レスキュー協会のボランティア説明会に参加しました。

こちらは、阪神淡路大震災を契機に【犬と共に社会に貢献する】という理念のもと

➊ 災害救助犬の育成・派遣

➋ セラピードックの育成・派遣

❸ 動物福祉活動

の3つの活動をされています。

令和6年能登半島地震でも、すぐに情報収集を開始され、同日20時03分、隊員の方5名と救助犬2頭、ペット飼養世帯に今必要な支援を届ける職員の方2名が現地に出発されました。

 

こう聞くと、少し緊張感を感じてしまうのは私だけでしょうか…

ところが、実際にお会いしたワンコたちは、とても朗らかでした。

もちろん訓練中は緊張感が張り詰めているとは思いますが、私たちがお会いしたときには、準備してもらったプールで楽しそうに遊んでいました。

私たちの姿を見つけると、お気に入りの恐竜のおもちゃを1人1人に見せて回ってくれたり、おもちゃをこっそり隠そうとして、訓練士の方に注意されていたり…

普段は一般家庭の“うちの子”と変わりないのだなぁと、改めて感じました。

 

セラピードックのワンズは、その名のとおり<癒し>そのもの。

初めて会う私にも、笑顔で接してくれます。

 

災害救助犬も、セラピードックも、その子の性格を本当によく理解して負担が大きくならないよう配慮もされているとのこと。

社会に貢献してくれる子たちだからこそ、人間側の配慮は欠かせませんね。

 

他にも

ペットの防災・ペットとの非難に関する講演や研修」も受けてくださっているそうです。

ぜひ尼崎市の活動にお呼びして、ペットの防災の情報を発信していきたいと思います。

 

NPO法人 日本レスキュー協会のHPのリンクはこちらです。

https://www.japan-rescue.com/?gad_source=1&gclid=CjwKCAjwmrqzBhAoEiwAXVpgoqkR_I1x-qYq7eDJFgtWrQYeUgBsHpRt73pdAZd_wsOogF0Ppxi3GhoCBzEQAvD_BwE

 

様々な支援も募集されていますので、関心を持たれた方はぜひ!!

私も、ボランティアとして、できることをひとつひとつ頑張ります♪

2024-06-04 13:56:00

判例シリーズ 1

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今日は「ペットに関わる判例」のご紹介です。

(広島高裁松江支部 平成15年10月24日判決)

 

中型犬を仕事場の車庫で紐でつないで飼育していた、飼い主さん。

ある日、前を通る小学5年生の子供さんが車庫に立ち寄り、犬に触れ、さらに近づいたところ鼻付近を噛みつかれてしまい、上口唇部挫創、鼻部擦過創と傷を負ってしまった事案です。

 

民法718条には【動物の占有者等の責任】が定められています。

簡単に言いますと「動物を飼っている人は(管理しているだけでも)その子が他人に与えた損害を賠償する責任がありますよ」と言っています。

ただし、なんでもかんでもではなくて、「その子の性質などに従って相当の注意をしていたら話は別ね」となっています。

 

そこでこの事件は、飼い主さんが「相当の注意をしていたかどうか」「子供さんに責任はなかったのか」が争われました。

この「相当な注意」。

最高裁判決では「通常払うべき程度の注意義務を意味し、異常な事態に対処しうべき程度の注意義務まで課したものではない」と解されていますが、実際には飼い主さんがある程度の注意をしていたとしても、相当な注意を払っていましたね、と認定されることはまれであるようです。

この事件でも飼い主さんは、私有地内で紐につないで飼育していたこと、【犬にさわらないでください】と看板を設置して注意喚起をしていたことなど主張されましたが、それでは足りないと判断されました。

それは、その犬が

・以前にも人に咬みついて怪我をさせたことが2件あること

・外部との境となるシャッターから約43㎝の地点まで出ることができるので、人が簡単に触ることができること

また飼育環境も

・私有地と言っても遮蔽されていないので、人が自由に近づけること

・公道付近は児童の通学路であること

などを理由として、【人が犬に近づかないような措置を講ずる必要がある】として「相当な注意を尽くしたとは言えない」と判断されました。

 

ただし、裁判所は子供さん側にも、「【犬にさわらないでください】と書かれた看板の内容を理解できたと言えるし、その犬が人を咬む犬だと認識していたのであるから不用意に犬に近づき手を差し出したことがこの事故を招いた一因であった」として過失の割合を5割としました。

結果、障害慰謝料  20万円

   後遺障害慰謝料60万円 の合計80万円が認められましたが、過失相殺により、子供さん側の請求としては慰謝料合計40万円が認められることになりました。

 

本当に悲しい事故です。

子供さんも犬が大好きだから触れたかったのではないでしょうか。

動物を嫌いにならないでいてくれたら…と願わずにいられません。

 

動物と暮らす人は、他の人に迷惑をかけたり怪我を負わせたりしないように細心の注意を払いながら、でも動物たちとの暮らしを楽しんでいく必要がありそうです。

すべての“うちの子”と飼い主さんが、油断は排しながらも幸せに暮らしていけますように。。

私も気を付けます。

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