モフリの雑感
判例シリーズ 3
判例シリーズ第三弾です!
今回は名古屋高裁平成20年9月30日判決 を取り上げてみます。
ある飼い主さんたちが、ワンコと車でお出かけ中に起こってしまった悲しい事故です。
そのワンコは、ペット用のシートベルトを装着していたわけではなく、飼い主さんの足元で伏せの姿勢でドライブしていました。
そんなワンコが乗っている車が赤信号で停車していた時、大型貨物自動車に追突されてしまいました。
ワンコは第二腰椎圧迫骨折により、足が麻痺してしまうという障害を負い、飼い主さんたちは加害者である運転手さんと、その運転手さんの使用者である会社に対し、損害賠償をもとめました。
飼い主さんたちは、治療費、交通費、通院・自宅付添看護費などに加えて、慰謝料や弁護士費用も含む990万5706円を求めました。
ここでは、おなじみの動物占有者責任(民法718条)が問題となるのではく、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)が問題となります。
簡単に言うと、車をぶつけてしまったのだから、損害を賠償する必要があるよねっていうことです。
この裁判でのポイントは
①ワンコの治療費はどこまでが損害賠償の対象になるのか
②飼い主さん側の過失(ワンコをペット用のシートベルトなどで固定していなかった)は認められて過失相殺がされるのか
となりました。
よく「法律の中ではペットはモノとして扱われる」と言われます。
確かにそういう見方があることは否定できません。
今回の事故でも、ワンコ自身が「怪我をしたので治療費と慰謝料を」と請求をすることはできません。
あくまでも、相手方は飼い主さんの大切なモノを傷つけてしまったことに対して、飼い主さんに対する責任を負うに過ぎません。
このあたりが「モノ扱い」と言われる原因なのでしょうか。
ですがこの裁判では、
本来は物が毀損した場合には、当該物の時価相当額に限り、相当な因果関係のある損害とすべき
としつつも、
「愛玩動物については、生命をもつ動物の性質上、必ずしも当該動物の時価相当額に限られるとするべきではなく、当面の治療やその生命の確保、維持に必要不可欠なものについては、時価相当額を念頭に置いたうえで、社会通念上、相当と認められる限度において、相当因果関係のある損害にあたる」
としました。
つまり、
本来は、モノが傷つけられた場合の損害は、そのモノの今の価値(価格)で判断するし、その傷も事故によるものとハッキリしてるものだけなんだよね
としつつも
愛玩動物はいわゆるモノとは違うよ、だからその動物を助けるために、命を守るために必要なことは時価を意識しつつも賠償する責任があるね。
と言っています。
そして1.治療費11万1500円
2.車いす制作料2万5000円
3.慰謝料 40万円(飼い主さんおひとりに対し20万ずつ)
を認めました。
ただし、飼い主さん側の過失として
動物を乗せて自動車を運転する者としては、予想される危険性を回避し、あるいは、事故による損害の拡大を防止するため、犬用シートベルトなど動物の体を固定するための装置を装着させるなどの措置を講ずる義務を負う
としました。
飼い主さんがこのような措置を講ずることなく、
飼い犬を横に伏せた姿勢で寝かせ、助手席の人物が飼い犬の様子を監視するようにしていたにすぎないのであるから過失がある
とし、1割の過失相殺を認めました。
今や「ペット、愛玩動物といっても家族」とお考えの方は多いと思います。
そんな飼い主さんにとって「単なるモノとは違う」という判決はとても嬉しいことだと思います。
ですがその分、
命あるものに対する人間の責任を加害者側にも被害者側にも重く考えた
判決となっています。
命を育てる者としての自覚を促されているのかもしれません。
気を引き締めて、大切な“うちの子”との暮らしを楽しみましょう♪
熱中症にご注意!!
暑い日が続いていますが、みなさまお元気でお過ごしでしょうか?
当事務所の看板犬、双志郎はバテ気味です。。
暑さもさることながら、気圧の大きな変化に自律神経が乱れている様子です。
毎日、ぽてぽてと移動しながら過ごしやすい場所を探しています。
雷雨など大きな天候の乱れは人も動物も影響を受けてしまうのですね。
さて、この時期の恐怖といえば熱中症です。
総務省消防庁の発表によりますと、
7月29日~8月4日までの全国の熱中症による救急搬送人員は、12,272人
だそうです。
1週間で、こんなにも多くの人の命が危険にさらされたのですね。
熱中症の恐怖は、動物も同じです。
エアコンをうまく利用して“うちの子”を熱中症から守りましょう。
犬の場合、犬種により異なりますが、原則として快適な室温は25℃~26℃と言われています。
猫の場合は、26℃~28℃。
多くの小鳥の快適な室温は30℃。
などなど…
もちろん、種類や病気の有無、年齢などの個体差があるので一概には言えませんが、それぞれに快適な温度、そして危険な温度が存在します。
すべての種類の大切な“うちの子”の、快適な環境を用意したいですね。
エアコンをつけたら安心!!でもないのが、動物と暮らす場合の注意ポイント。
冷えすぎたら、逃げれるようにしておくのも必須です。
ハウスや毛布など、エアコンの冷気から身を隠すための準備も怠りなく。
先日、お世話になった獣医師の先生とお話する中で、今でも「うちの子は寒いのが嫌いで…」とエアコンを使用されない方もいらっしゃるとか。
獣医師や専門家の方からエアコンは必要ないとのお墨付きをもらっているのでない限り、この猛暑の中、エアコンでの室温調整は必要です。(地域差もあるかとは思いますが…)
熱中症は命が危険にさらされます。
大切な“うちの子”のために、最大限の注意を払ってあげたいところです。
例えば…
お出かけになる際、「うっかりエアコン消してしまった!」なんてことのないように。
また、「“うちの子”が、リモコンを勝手に触ってしまい、エアコンを消してしまった!」なんてことのないように。
細心・最大の注意をはらって、みんなで猛暑を乗り越えましょう♪♪
どうかお外で暮らす子たちも、この猛暑を乗り越えてくれますように…
判例シリーズ 2
判例シリーズ第二弾です!
今回は、大阪地裁平成18年9月15日判決 を取り上げてみます。
ある飼い主さんの処で暮らしている猟犬のワンコ。
ある日、飼い主さんのお母さんがお散歩に連れて出ますが、その時に悲しい事故が起こりました。
ワンコが暮らすご自宅前を偶然自転車で通りかかった方に、飛びかかるような様子で近づいて吠えかかってしまいました。
驚いたその方は、木や壁に接触し最後には転倒し、左母趾末節骨骨折等のケガを負われました。
前回の判例シリーズでご説明しましたように、民法では動物占有者責任という責任を定めています。(民法 第718条1項)
簡単に言いますと、「動物を飼っている人や管理している人は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任がありますよ!」と法律は定めています。
そして、「ただし、その動物の種類や性質に従って相当の注意をしていたら別ね」という例外も設けています。(民法718条1項ただし書)
そこで、この裁判のポイントは、
① 飼い主さんは相当な注意をしていたか
② ワンコが直接被害者に接触していなくても、飼い主は損害の責任を負うのか
③ 賠償額はいくらか
となりました。
裁判所は、
①飼い主さんのお母さんが、家の前をよく確認せずにワンコを連れて出たこと、飛びかかるような様子で近づいて吠えかかることを許した行為は、相当な注意をしていたとは言えませんね、として過失があるとしました。
②飼い主さん宅から出たワンコが、通行人や自転車に対して向かっていけば、驚いて転倒することは容易に想像できますよね。だから直接接触していなくても、飼い主さんの過失と被害に遭われた方の損害とには因果関係があるといえますよ。だから飼い主さんは責任を負います、としました。
そこで、
③飼い主さんが負う賠償額は
治療費 13,859円
通院交通費 16,260円
休業損害 1,080,000円
障害慰謝料 440,000円
後遺障害逸失利益 1,106,161円
後遺障害慰謝料 1,100,000円
弁護士費用 350,000円
の合計4,106,280円 を認めました。
この判例により、ワンコが接触していなくても、ワンコが吠えかかったことによる事故の責任は飼い主さんが負うのですよ、ということになりました。
動物を飼う、一緒に暮らすことの責任の重さがよくわかる判例となっています。
一時の感情で動物を飼うのはやめましょう!
動物を飼ったら最後まで責任を持って愛情を持って育てましょう!
とは、よく言われる言葉です。
この責任には、動物の命、暮らしに対する責任だけではなく、他人に対しての責任もあるということを肝に銘じていきたいと思います。
きちんと覚悟を持って動物と暮らすことが必要なんですね。
人も動物も幸せに暮らしていけますように…
のとじま水族館 一部再開へ
※写真と本文は関係ありません
石川県七尾市にある、石川県内唯一の水族館「のとじま水族館」が、今月20日から『一部営業再開』されるそうです!
のとじま水族館は、元日の能登半島地震で甚大な被害をうけ、現在に至り休館が続いています。
建物自体の倒壊はなかったものの、震度6強の激しい揺れで設備の故障が相次ぎ、約5000の生き物が命を落としたとされています。
「配管がいたるところで破損し、ボイラーやろ過装置などが故障。
水温・水質・水位の維持が難しくなり、生き物を取り巻く環境が刻々と悪化していった。」
との新聞記事を目にして、胸が詰まりました。
スタッフの方々のお気持ちは、察するに余りあります。
のとじま水族館では、飼育継続が難しいと判断したイルカ、アザラシなどの受け入れを全国の施設に要請。
2月上旬までに、快諾してくれた9施設へ9種63個体を移送したそうです。
生き物を守りたいという思いを投げかけ、その思いを受け止めてくれた方々、双方の方々への尊敬の念に堪えません。
7月20日からの『一部営業再開』の発表に心躍る方もいらっしゃるのではないでしょうか。
以下リンクを貼っておきますね。
7月20日と言えば、夏休みの始まりでしょうか?
子供たちの楽し気な声が、館内にあふれることを願ってやみません。
避難している生き物たちが一日も早く戻ってこれますように…
“アビガン”がSFTSの治療薬に
富士フィルム富山化学株式会社は、24日に新型インフルエンザ薬の“アビガン”を、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の治療にも使えるようになる承認を取得したと発表しました。
これは世界初の治療薬が登場したことになります。
すごいですね!
SFTSというのは、主にSFTSウィルスを保有するマダニに刺されて感染します。
潜伏期は6~14日で、発熱や消化器症状などが主ですが、筋肉痛や神経症状などの症状も出現するそうです。
怖いのが致死率。
厚生労働省、国立感染症研究所の発表によりますと、ネコは約60%、ヒトは10~30%だそうです。
イヌは不顕性感染(症状が出ない感染)すると考えられてきましたが、2017年6月に、世界で初めて発症したイヌが見つかり、状況が変わりました。
今までは対症療法しかなかったのですが、アビガンが治療薬として効果を発揮してくれれば、ありがたいですね!
とは言え、大切なのは予防です。
人の場合は、農作業や野山を散策するときには、長袖、長ズボン、足を完全に覆える靴(サンダルなどは避けてくださいね)、帽子、手袋を着用すること。
草むらや藪などはマダニが多く生息するので要注意です。
もし刺されたら、皮膚科などを受診して確認してもらいましょう。
犬、猫の場合は、予防薬が充実しています。
獣医さんに相談してみてください。
とは言え、予防薬といえど完全ではありません。
お散歩などお外から帰ったらこまめなチェックを忘れずに!
特に、頭・耳・目のふち・お腹・指の間・背中・しっぽなど、チェックしてあげてくださいね。
もし刺されたら、獣医さんに診てもらいましょう。
マダニは他にも、日本紅斑熱・ライム病・ダニ媒介性脳炎・犬バベシア症を引き起こすこともあります。
予防できるものは徹底して予防し、それでも刺されたら医師、獣医師に診ていただく。
むやみに怖がる必要はありませんが、きちんと対策して人も動物も安全に暮らしていきたいですね。
双志郎と私も気をつけます。