モフリの雑感

2024-09-06 15:10:00

判例シリーズ 3

判例 裁判.jpg

 

判例シリーズ第三弾です!

今回は名古屋高裁平成20年9月30日判決 を取り上げてみます。

 

 ある飼い主さんたちが、ワンコと車でお出かけ中に起こってしまった悲しい事故です。

そのワンコは、ペット用のシートベルトを装着していたわけではなく、飼い主さんの足元で伏せの姿勢でドライブしていました。

そんなワンコが乗っている車が赤信号で停車していた時、大型貨物自動車に追突されてしまいました。

ワンコは第二腰椎圧迫骨折により、足が麻痺してしまうという障害を負い、飼い主さんたちは加害者である運転手さんと、その運転手さんの使用者である会社に対し、損害賠償をもとめました。

飼い主さんたちは、治療費、交通費、通院・自宅付添看護費などに加えて、慰謝料や弁護士費用も含む990万5706円を求めました。

 

ここでは、おなじみの動物占有者責任(民法718条)が問題となるのではく、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)が問題となります。

簡単に言うと、車をぶつけてしまったのだから、損害を賠償する必要があるよねっていうことです。

 

この裁判でのポイントは

①ワンコの治療費はどこまでが損害賠償の対象になるのか

②飼い主さん側の過失(ワンコをペット用のシートベルトなどで固定していなかった)は認められて過失相殺がされるのか

となりました。

 

よく「法律の中ではペットはモノとして扱われる」と言われます。

確かにそういう見方があることは否定できません。

今回の事故でも、ワンコ自身が「怪我をしたので治療費と慰謝料を」と請求をすることはできません。

あくまでも、相手方は飼い主さんの大切なモノを傷つけてしまったことに対して、飼い主さんに対する責任を負うに過ぎません。

このあたりが「モノ扱い」と言われる原因なのでしょうか。

 

ですがこの裁判では、

本来は物が毀損した場合には、当該物の時価相当額に限り、相当な因果関係のある損害とすべき

としつつも、

愛玩動物については、生命をもつ動物の性質上、必ずしも当該動物の時価相当額に限られるとするべきではなく、当面の治療やその生命の確保、維持に必要不可欠なものについては、時価相当額を念頭に置いたうえで、社会通念上、相当と認められる限度において、相当因果関係のある損害にあたる

としました。

つまり、

本来は、モノが傷つけられた場合の損害は、そのモノの今の価値(価格)で判断するし、その傷も事故によるものとハッキリしてるものだけなんだよね

としつつも

愛玩動物はいわゆるモノとは違うよ、だからその動物を助けるために、命を守るために必要なことは時価を意識しつつも賠償する責任があるね。

と言っています。

そして1.治療費11万1500円

   2.車いす制作料2万5000円

   3.慰謝料 40万円(飼い主さんおひとりに対し20万ずつ)

を認めました。

 

ただし、飼い主さん側の過失として

動物を乗せて自動車を運転する者としては、予想される危険性を回避し、あるいは、事故による損害の拡大を防止するため、犬用シートベルトなど動物の体を固定するための装置を装着させるなどの措置を講ずる義務を負う

としました。

飼い主さんがこのような措置を講ずることなく、

飼い犬を横に伏せた姿勢で寝かせ、助手席の人物が飼い犬の様子を監視するようにしていたにすぎないのであるから過失がある

とし、1割の過失相殺を認めました。

 

今や「ペット、愛玩動物といっても家族」とお考えの方は多いと思います。

そんな飼い主さんにとって「単なるモノとは違う」という判決はとても嬉しいことだと思います。

ですがその分、

命あるものに対する人間の責任を加害者側にも被害者側にも重く考えた

判決となっています。

命を育てる者としての自覚を促されているのかもしれません。

気を引き締めて、大切な“うちの子”との暮らしを楽しみましょう♪