モフリの雑感
判例シリーズ 2
判例シリーズ第二弾です!
今回は、大阪地裁平成18年9月15日判決 を取り上げてみます。
ある飼い主さんの処で暮らしている猟犬のワンコ。
ある日、飼い主さんのお母さんがお散歩に連れて出ますが、その時に悲しい事故が起こりました。
ワンコが暮らすご自宅前を偶然自転車で通りかかった方に、飛びかかるような様子で近づいて吠えかかってしまいました。
驚いたその方は、木や壁に接触し最後には転倒し、左母趾末節骨骨折等のケガを負われました。
前回の判例シリーズでご説明しましたように、民法では動物占有者責任という責任を定めています。(民法 第718条1項)
簡単に言いますと、「動物を飼っている人や管理している人は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任がありますよ!」と法律は定めています。
そして、「ただし、その動物の種類や性質に従って相当の注意をしていたら別ね」という例外も設けています。(民法718条1項ただし書)
そこで、この裁判のポイントは、
① 飼い主さんは相当な注意をしていたか
② ワンコが直接被害者に接触していなくても、飼い主は損害の責任を負うのか
③ 賠償額はいくらか
となりました。
裁判所は、
①飼い主さんのお母さんが、家の前をよく確認せずにワンコを連れて出たこと、飛びかかるような様子で近づいて吠えかかることを許した行為は、相当な注意をしていたとは言えませんね、として過失があるとしました。
②飼い主さん宅から出たワンコが、通行人や自転車に対して向かっていけば、驚いて転倒することは容易に想像できますよね。だから直接接触していなくても、飼い主さんの過失と被害に遭われた方の損害とには因果関係があるといえますよ。だから飼い主さんは責任を負います、としました。
そこで、
③飼い主さんが負う賠償額は
治療費 13,859円
通院交通費 16,260円
休業損害 1,080,000円
障害慰謝料 440,000円
後遺障害逸失利益 1,106,161円
後遺障害慰謝料 1,100,000円
弁護士費用 350,000円
の合計4,106,280円 を認めました。
この判例により、ワンコが接触していなくても、ワンコが吠えかかったことによる事故の責任は飼い主さんが負うのですよ、ということになりました。
動物を飼う、一緒に暮らすことの責任の重さがよくわかる判例となっています。
一時の感情で動物を飼うのはやめましょう!
動物を飼ったら最後まで責任を持って愛情を持って育てましょう!
とは、よく言われる言葉です。
この責任には、動物の命、暮らしに対する責任だけではなく、他人に対しての責任もあるということを肝に銘じていきたいと思います。
きちんと覚悟を持って動物と暮らすことが必要なんですね。
人も動物も幸せに暮らしていけますように…