モフリの雑感
判例シリーズ 1
今日は「ペットに関わる判例」のご紹介です。
(広島高裁松江支部 平成15年10月24日判決)
中型犬を仕事場の車庫で紐でつないで飼育していた、飼い主さん。
ある日、前を通る小学5年生の子供さんが車庫に立ち寄り、犬に触れ、さらに近づいたところ鼻付近を噛みつかれてしまい、上口唇部挫創、鼻部擦過創と傷を負ってしまった事案です。
民法718条には【動物の占有者等の責任】が定められています。
簡単に言いますと「動物を飼っている人は(管理しているだけでも)その子が他人に与えた損害を賠償する責任がありますよ」と言っています。
ただし、なんでもかんでもではなくて、「その子の性質などに従って相当の注意をしていたら話は別ね」となっています。
そこでこの事件は、飼い主さんが「相当の注意をしていたかどうか」「子供さんに責任はなかったのか」が争われました。
この「相当な注意」。
最高裁判決では「通常払うべき程度の注意義務を意味し、異常な事態に対処しうべき程度の注意義務まで課したものではない」と解されていますが、実際には飼い主さんがある程度の注意をしていたとしても、相当な注意を払っていましたね、と認定されることはまれであるようです。
この事件でも飼い主さんは、私有地内で紐につないで飼育していたこと、【犬にさわらないでください】と看板を設置して注意喚起をしていたことなど主張されましたが、それでは足りないと判断されました。
それは、その犬が
・以前にも人に咬みついて怪我をさせたことが2件あること
・外部との境となるシャッターから約43㎝の地点まで出ることができるので、人が簡単に触ることができること
また飼育環境も
・私有地と言っても遮蔽されていないので、人が自由に近づけること
・公道付近は児童の通学路であること
などを理由として、【人が犬に近づかないような措置を講ずる必要がある】として「相当な注意を尽くしたとは言えない」と判断されました。
ただし、裁判所は子供さん側にも、「【犬にさわらないでください】と書かれた看板の内容を理解できたと言えるし、その犬が人を咬む犬だと認識していたのであるから不用意に犬に近づき手を差し出したことがこの事故を招いた一因であった」として過失の割合を5割としました。
結果、障害慰謝料 20万円
後遺障害慰謝料60万円 の合計80万円が認められましたが、過失相殺により、子供さん側の請求としては慰謝料合計40万円が認められることになりました。
本当に悲しい事故です。
子供さんも犬が大好きだから触れたかったのではないでしょうか。
動物を嫌いにならないでいてくれたら…と願わずにいられません。
動物と暮らす人は、他の人に迷惑をかけたり怪我を負わせたりしないように細心の注意を払いながら、でも動物たちとの暮らしを楽しんでいく必要がありそうです。
すべての“うちの子”と飼い主さんが、油断は排しながらも幸せに暮らしていけますように。。
私も気を付けます。